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更新日:2023年2月7日

本證寺境内

 

国指定史跡 県指定文化財 市指定文化財
遺跡番号

541003(指定地)

540186 (埋蔵文化財包蔵地)

本堂 鼓楼・鐘楼・経蔵・裏門

 

 

 

 

所在地

安城市野寺町野寺26他

本證寺境内の概要

  平成27年(2015)に国史跡に指定された本證寺境内(ほんしょうじけいだい)は、戦国期~江戸時代に築かれた二重の堀と土塁の一部が残る史跡です。三河一向一揆に関わる寺院境内地であるとともに、浄土真宗寺院の伽藍(がらん)や仏教信仰のあり方を知るうえでも重要です。現在私たちが目にすることのできる主要な建物群と堀からなる景観は、江戸時代後期に描かれた「本證寺伽藍絵図(ほんしょうじがらんえず)」に描かれた境内の姿を今なお留めています。

 史跡地内には、寛文3年(1663)に建立された本堂など江戸時代に建立された堂宇と、それらが建ち並ぶ境内を巡る内堀、寺領のうち「寺内(じない)」と呼ばれた東西約320m、南北約310mの範囲を巡る外堀(大部分が地中に埋もれています。)、そして境内の北側に土塁が残存します。

 本證寺は、碧海台地と呼ばれる洪積台地上に位置します。近辺の台地東端には、東0.8㎞に加藤嘉明の父が居城したと伝わる岩根城、南東0.9㎞に藤井松平氏の藤井城、北1.2㎞に本多正信の館跡と推定されている小川的場丘城など小規模な城館がいくつか存在しました。境内周囲の標高はおよそ12~14mですが、外堀の北西で15mを測ります。発掘調査でも、標高の高い場所に位置する堀は空堀だったことが分かっています。一方、内堀で囲まれた本堂周辺は11m程度と低くなっており、現在でも本堂周りの内堀は水堀となっています。

本證寺伽藍絵図 江戸時代後期の本證寺境内
本證寺伽藍絵図 寛政年間(1798~1801) 江戸時代後期の本證寺境内

発掘調査の成果

 市教育委員会では、本證寺境内の全貌を明らかにするために、上記の「本證寺伽藍絵図」や明治期~戦前の地籍図、地元への聞き取りをもとに、埋まってしまった堀の位置を推定し、発掘調査により堀の位置の特定と形や大きさ、時期の確認などを行っています。

 ほとんどの地点で堀に埋まっていた土は、下層に戦国期(16世紀前半)の遺物を含む土、上層に江戸時代後期(18世紀後半~19世紀前半)の遺物を含む土でした。また、下の図のように戦国期の遺物を含む堀の下方は、約45°の急傾斜でしたが、江戸時代後期の遺物を含む堀の上方は、傾斜が緩く、地点によっては、堀の幅が戦国期よりも広くなっていました。

外堀断面図

堀断面凡例

 このことから、堀について次のように推測されます。

 一向一揆前に急傾斜で深い堀が掘られましたが、一揆終息後に堀は埋没しました。江戸時代前期に成立した『三河物語』には、家康の命令により堂などの建物は破却されたとあります。建物と同様に堀も防御施設として機能しない程度に埋められと考えられます。

 それから20年後に寺に戻ることを許された本證寺は、再興に取りかかります。堀も寺内の範囲を明示するために、戦国期とほぼ同位置に再掘削されました。ただし、この時は戦国期の堀ほど深く掘られませんでした。そのため、下層に戦国期の遺物を含む土が残ったのです。本證寺は、江戸時代を通じて、本山や領主と末寺や地方の寺院との間を取り次ぐ「中本山(ちゅうほんざん)・触頭(ふれがしら)」として地位を確立していきました。江戸時代中~後期には、一般寺院より格調高い鐘楼などの建造物を建立しており、その一環として堀も再掘削されたと考えられます。この頃には、もはや防御施設としての堀は必要なく、境内の景観整備や寺内の区画を目的とした役割に変わっていたと推測されます。

 明治期になると、寺内を含め寺領は没収となり、区画という堀の役割も失われます。こうして、役割を終えた堀の大部分は、境内周辺等一部を残して地上から消えてしまいました。

合わせて読みたい

G区外堀

戦国期と江戸時代以降とで、あまり改変されていない地点の外堀です。深さ2.8m、推定幅は4.6mです。

 

B区SD1

青:戦国期に掘削された堀のライン。この地点では、深さ2.5m、推定幅は5mです。

紫:江戸時代後期に掘削された堀のライン。この地点では、深さは戦国期より1m浅いですが、幅が10m近くに拡張されていました。

現地で見ることのできる外堀

東側外堀

①外堀(東から撮影)

現存外堀

東側外堀

②外堀(南から撮影)

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生涯学習部文化振興課文化財係
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