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更新日:2017年10月23日

今月のメッセージ

デンマーク王国コリング市との友好20周年訪問

本年はデンマーク王国と日本の国交樹立150年に当たっており、これを祝う意味で両国の皇族がそれぞれ相互にご訪問され、国家レベルの盛大な記念行事が行われています。

また安城市にとっては本年が、デンマークの姉妹都市コリング市との友好関係締結20周年に当たっています。そこで10月6日~14日まで、私は市議会議長をはじめとする総勢16名の派遣団でコリング市を訪問し、姉妹都市関係の継続を改めて確認しあう調印式に臨みました。この他、特に文化的な交流を末永く大切にしたいと考え、今回は箏(こと)と三味線といった日本の伝統楽器を演奏する方々8名(専任通訳者1名含む)にも同行していただきました。

ところ私は、本市の姉妹都市コリング市に訪問するのは、今回で3度目となります。1度目は当時市議会議員であった16年前、当時はまだ友好都市だったコリング市に仲間の市議3人とで訪問しています。そして2度目は8年前、市長としてコリング市との付き合いを「友好都市」から「姉妹都市」に深めるための調印式に臨んでいます。

そして今回、友好関係の締結から20周年を記念し、姉妹都市としてのお付き合いを再確認すべく再び調印式に臨みました。この間、デンマークでは国政での政権交代が複数回起きていた他、コリング市長も交代されています。現コリング市長は2期8年目をお務めですが、前回の姉妹都市関係締結時の市長とは別の方のため、今回改めて相互確認の意味で調印を交わしたものです。

調印式で並んでの記念写真

【調印式でサインする私】

 

1、異文化交流の意義

今回の訪問は16名の派遣団が、公式訪問団と音楽交流団の2つのグループに分かれて別々に行動するというやや変則的な交流となりましたが、コリング市の役職者の皆さんとの公的な交流と、和楽器演奏を通じた幅広い音楽愛好家の皆さん方との交流が同時並行で進み、これまでにない大きな成果が挙げられたと感じました。特に和楽器演奏者の皆さんは、コリング市滞在4日間で8回もの演奏会に参加されるという大変なハードスケジュールをこなされたため、私は団長として彼女らの体調を心配しましたが、睡眠不足と精神的緊張を乗り越えてくださり胸をなでおろしました。

滞在スケジュール上、私はそのうちの2回の演奏会にしか出席できませんでした。1回目はコリング市街地郊外の古い教会での演奏会、そして2回目は市街地近郊の学校での演奏会でした。会場によって聴衆は大きく異なり、1回目は教会近隣の高齢者の皆さん、また2回目は小学校中高学年の子どもたちといった顔ぶれでした。高齢者の皆さんは和楽器で弾くデンマーク国歌に強く反応され、また子どもたちはテンポのよい日本のアニメソングを喜んでいました。

国際交流の場で常にしみじみ感じるのは、美術や音楽といった芸術は、ことばや理屈を超えて異国の皆さんの心に直接響くため、極めて重要な潤滑油の役割を果たしてくれるということです。特に和楽器は、コリング市民にとって初めて目にする楽器のため、その驚きは大きいものと思われました。また、本市からの和楽器演奏者の皆さんも、異国の聴衆の意外な反応に新鮮な感動を覚えられたことでしょう。これからますます練習に身が入り、精進されることと期待しています。われわれにとって特別ではない和の文化ですが、海外交流での訴求力はとても大きいことが確認されました。

和楽器演奏者の記念写真撮影

【和楽器演奏後のマスコミ取材】

2、コリング市の新たな挑戦

デンマークでは築100年を超す建物は、市の許可なくして自由に取り壊すことができないため、どこの町でも中心市街地には昔ながらの古い街並みが残されています。また日本のように地震の心配がないため、古く傾きかけたように見える建物でも、修理を重ねてさまざまな形で現在も利用が図られています。

よって、目にする建物の外観に保守性を感じてしまうのですが、実際にその中に入ってみるとかなりモダンな屋内に変えられていることが多く、その落差に驚かされることがありますが、産業振興に取り組む姿勢もそれによく似ていると感じました。

BUSINESS KOLDINGの外観

【BUSINESS KOLDINGの外観】

コリング市は、フィヨルドの海に面しているため良好な港湾があり、使われなくなった古い海運倉庫を活用して、「BUSINESS KOLDING」というビジネス支援センターを開設していました。そして3年前に開校されたという「University of Southern Denmark(南デンマーク大学、以下SDUと略)」などの研究拠点を臨海地域に集め、民間企業の参加も得た多彩な人や情報の交流を図ろうとする取り組みは注目に値すると思われました。

近くに鉄道主要駅のある港周辺には、BUSINESS KOLDING、SDU、デザイン専門学校、Knowledge Center(業務の内容は不明)の他、建設が始まったIBA(ビジネスアカデミー)もやがて加わり、いずれの施設へも徒歩数分で移動できる環境となっています。それら施設は、大学在学中の学生たちの学びと実習の場となり、また企業経営者や研究者たちの実験や研究の場とされつつありました。

BUSINESS KOLDING内での説明

【BUSINESS KOLDING内での説明】

BUSINESS KOLDINGは開設されてまだ1年目、そしてIBAはこれからという段階なので、まだすべてが十分機能しているとは言い難い状況ではありましたが、計画されたこれらの施設が軌道に乗れば、産官学民の連携によりかなり斬新な新しい製品や事業が共同開発されるものと思われます。本市も10月1日より、アンフォーレ内にビジネス支援センターを開設しましたが、教育の場と起業支援、そしてそのための都市計画から地域開発までをも総合的にとらえて、これほど戦略的に人材や新産業の育成とまちづくりを進めている都市を、日本国内で見聞きしたことはありません。

南デンマーク大学の外観

【南デンマーク大学の正面入口】

BUSINESS KOLDINGでこうしたお話を伺ううち、頻繁に耳にする「デザイン」ということばが、そられ取り組みの根幹をなしていることに気づかされました。デザインと聞いて私は当初、絵画や衣類の色柄を連想し、ここのデザインスクールで室内装飾やアパレルへの人材育成をしているのかと思い込んでしまいました。しかし、あれこれお聞きしてみますと、デンマークで語られるデザインとは、個人の人生設計から始まり、企業の経営計画や事業戦略、さらに行政機関の行財政計画や産業政策、都市計画など、公私にわたるさまざまな分野の展望を描き、具体的な長期計画にまとめることを意味しており、それが包括する意味の大きさに驚かされました。デンマーク人はMindsetということばを持ち、8歳から人生設計を描くような訓練が始められており、このビジネス支援センター職員が各学校へ出向き、小学生の子どもらにまで職業や仕事というものを教えていると聞き、幼少の段階から職業教育が行われていることを知りました。

私たち日本人には、デンマークで聞いたデザインをうまく言い換えることことばが見当たらないように思われますが、この地で語られるデザインは、私たち日本人には「デザイン思考」という基本理念と理解するのが適切ではないでしょうか。個人の能力や人生設計、職業選択に至る学習や教育訓練、そして企業や行政機関の経営改革や事業計画、さらに地域の経済戦略に至る、広範な分野のグランドデザインを描くことを意味するものと思われます。デンマークは小国ですので、人・物・お金など限られた社会資源をこのデザイン思考で効率的に集約させて、創造力あふれる人づくりにより独創的な新産業を生み出す戦略が描かれているのではないかと受けとめました。

子どもの才能を引き出すデザイン教育

【幼児の才能を育てるデザイン教育】

デザインに関して特に驚かされたのは、コリング市の行政計画の責任者が、かつて宝石デザイナーをしておられたということです。日本であれば「?」でしかありませんが、彼は「宝石のデザインも、行政計画のデザインも基本は同じです」とさらりと述べた後、さらにこう続けました。「宝石デザイナーは顧客の望みをきちんと把握し、相手が満足するように宝飾をデザインする仕事です。行政も市民のニーズをきちんと把握し、市民が満足するような行政計画をデザインすることが問われるのです」。言われてみればそうなのかもしれませんが、日本人の私たちは頭をひねるしかありませんでした。

本市に関して言えば、まだ地域社会全体を貫くデザイン思考は、その概念すら存在していませんが、市役所内には市の総合的な計画を立案する「企画」という部署があります。デンマーク流に考えれば、そこを核として子どもや若者の能力をいかに開発し、いかによき職業教育につなげてゆくか。そして彼らの柔軟な発想や能力を地域の新産業育成にどう生かすのか。またそのための総合的な都市計画や土地利用、さらにそこに向けての行財政計画をどうまとめるのかというところにまで発展させてゆくべきなのでしょう。

しかし、終身雇用制度を基本とする日本では、デンマークのように産官学民を自由に行き来する人事交流がないため、その実現への道のりはかなり遠いように感じられます。それでもとりあえず、そのことに早い段階で気づいたことは幸いで、こうした北欧の新しい社会理念を参考とし、本市におけるデザイン思考というテーマについて、遅ればせながら私なりに考えてみたいと思っています。

 

3、難民・移民問題

デンマークに滞在した最後の日、デンマーク大使館に表敬訪問することができたため、お二人の大使館員から現地の貴重な情報をお聞きすることができました。私からは、まず首都コペンハーゲン市内はもちろんのこと、コリング市の学校訪問の際にも、黒人系やイスラム系の人々(生徒も含む)を多く見かけたことついてお尋ねしました。

多民族化しつつある教育現場

【多民族化しつつある教育現場】

近年のデンマークには、独裁政権やISなどによる内戦状態から脱出するため、中東やアフリカ(ソマリア)から多くの難民が流入し、次から次へと流入する難民移民にどう対応すべきかが重要な政治問題になり、すでにそれによる国政での政権交代がこれまでに複数回起きていることを知りました。現与党の国民党は難民移民の排斥派が主流をなし、難民移民らの生活保護を減額し始めるなど他国民の流入に消極的な態度をとっているようです。

隣国のドイツは人口規模が8千万人と大きいため、こうした難民らを国全体で受容できてしまうようですが、人口わずか5百万人ほどのデンマークでは彼らを受け入れられないため、シェンゲン協定によりEU圏内の人の移動は自由とされているにもかかわらず、ドイツとの国境管理を厳格に行っているとのことでした。

小国デンマークの国防戦略では、外部から攻め込まれる以前に、相手国の治安安定に尽くすことが重要との基本認識があり、そのため早い段階からNATOへの軍事協力をしてきているそうです。中東紛争への軍事協力にも積極的に参加してきた歴史があり、戦死した兵士の数は人口比からすればEU諸国では群を抜く高さとなっているほどで、その報復措置としてテロ事件がデンマーク国内でいつ起きてもおかしくないと案じられているとのお話もありました。

デンマークはその国家としての規模から財政力も小さいため、日本のような大きな経済支援はできませんが、対象国家を厳選して国防を意識した対外支援を進めているとお聞きしました。島国日本とは異なる、大陸との陸続きの国家防衛の大変さを感じました。

4、まとめ

8世紀半ばから11世紀にかけて、欧州全域を脅かしたバイキングの歴史を持つデンマークです。現在は地理的に小さな国ながらも、高いプライドと自らが北欧のリーダーとの気概を持つ国という印象を持ちました。ただ日本からこの国を見た場合、遠隔地でありまた国家規模も小さく情報が少ないため、世界一の幸福国家と言われてもなかなかその全容までは理解できていませんでした。

今回の訪問では、コペンハーゲン市内の日本大使館で外交官の方と面会する時間を確保していただき、お話をお聞きしましたところ、高負担高福祉のため老後の生活への不安のない暮らしができ、また日本人ほどの過重労働はなく、それでいて平均的な国民年収は500万円前後と高く(民間給与実態調査では日本は420万円)、精神的にも、経済的にも、時間面でも、余裕のある国民生活が実現できていることは、ほぼ間違いないことを確認しました。

近代的な市役所オフィス

【新しい市役所内オフィス】

ただ残念なことにその根本的な理由は、着任して半年ほどの参事官も解明できていないとおっしゃっていましたが、北海の油田によるエネルギーや食料などの自給率の高さの他、風力風車製造のヴェスタ、海運のマースク、医薬品のノルディクス、玩具のレゴなど、世界を代表する大手企業の存在を挙げられました。しかし、国民の大半が中小企業に勤めているのが現実で、なぜほとんどの国民が豊かさを享受できているのかはこれから勉強しますと結ばれました。

国が小さいがゆえに国民の結束が強い、国家運営の効率が高いなども考えられますが、いずれにしてもデンマークの自称ではなく、客観的な指標により「世界一の幸福国家」とされるこの国とのお付き合いを通じて、本市が目指す健やか幸せの「健幸都市」実現につなげてゆきたいと思っています。来年5月にはコリング市民皆さんの来日が予定されています。安城市での滞在を楽しんでいただき、今度は日本の良さを体感していただけるよう今から思案しています。

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