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更新日:2018年5月17日

今月のメッセージ

日本人が気付かないニッポン

1、安城市発展祭

毎年5月初旬、本市の市制施行記念式典として「安城市発展祭」を開催しています。この式典では、主催者である安城市長と市議会議長とがそれぞれ挨拶を述べ、その後、市政に大きな貢献をくださった方への表彰、多額のご寄附をくださった方への感謝状贈呈を行っています。

安城市発展祭表彰の様子

【安城市発展祭表彰の様子】

式典へは、常日頃から安城市政に関わりの深い皆さん方700人ほどがご出席され、1年間の市政の成果をご紹介申し上げるとともに、栄えある表彰等をお受けになられた皆さんを温かく見守っていただいてまいりました。

しかし、各種団体の代表であられる錚々(そうそう)たる皆さん方が、わざわざ一堂に会してくださるのに、客席にて1時間半ほどの式典をご覧になり、そのままそそくさとお帰りになられることが大変忍びなく思われました。出席してよかったと感じていただけるように、ささやかな収穫をお持ち帰りいただけないか…と、私なりに思案してみました。

その結果、安城市制60周年の発展祭を機に、式典をできるだけ簡素化して午前中に時間的な余裕をつくり出し、さまざまな分野で活躍して来られた方々による「講演会」の時間を設けることとしました。講師の方から、普段なかなか聞くことができない貴重なお話を聴講することで、多くのご来場の皆さんに共通認識をお持ちいただき、気持ちを一にして市政を考えるきっかけになればと願っての講演です。

今回の発展祭が市制66周年となりますが、これまでの6年間の講師をふり返れば、女子柔道の谷本歩実さん、都市環境ご専門の涌井史郎さん、医師の日野原重明さん、医師の鎌田實さん、女子マラソンの有森裕子さん、登山家の野口健さん、そして今年は日本文学研究者のロバート キャンベルさんをお招きしてきました。スポーツ、まちづくり、健康づくり、そして日本文化と、さまざまな分野から有意義なご教授をいただいてまいりました。

会場としている市民会館サルビアホールは最大1200人を収容できるため、招待者としてご来場される700人以外でも聴講のご希望があれば、可能な限りご入場いただいています。もちろん講演テーマによって聴講希望者の多い少ないはありますが、おおむね毎年ほぼ満席に近い状態で聴講いただいてまいりました。

2、ロバート キャンベルさん講演「日本人が気付かないニッポン」より

さて今年の発展祭ですが、式典後の講演はロバート キャンベルさんにお願いし、「日本人が気付かないニッポン」と題してお話いただきました。グローバル化が進む現代社会、熾烈(しれつ)な多国間の経済競争が繰り広げられています。そうした国際競争に打ち勝つべく、日本の官民を挙げての新たな挑戦が続けられていますが、かつての高度経済成長期のような日本の一人勝ちのような状況とはほど遠い現実に置かれているようです。

そうした苦境の中、欧米の先進諸国の新しい取り組み、中国や韓国といった新興国の追い上げが目立つようになり、こうした諸外国の動きに気をとられているうち、われわれ日本人が本来備えていたはずのわが国独特の古き良き特性を見失ってしまうように思われてなりませんでした。そんな時、キャンベルさんから「日本人が気付かないニッポン」というテーマを投げかけていただき、私は願ってもないテーマだと思いましたし、また会場を埋め尽くした聴講者の皆さんの中にも私とよく似たお気持ちの方はおいでだったのではないかと想像しました。

ロバート キャンベルさん講演の様子

【ロバート キャンベルさん講演の様子】

キャンベルさんは日本社会独特のよき特長を、次の3つに集約されて説明してくださいました。

  • 日本において「学ぶこと」、「創ること」、「伝えること」は一連(ひとつら)なりとして文化を伝えてきた

お話によれば、世界では日本とドイツそれぞれで、よく似た徒弟制度が継承されてきていたそうです。しかし、今やドイツでは師弟関係がバラバラになりつつありますが、日本ではいまだに師弟が一連なりになる土壌が残されているとのことでした。それは現在の日本の大学教授と学生の関係によく表れていると述べられました。

またキャンベルさんは、江戸時代の文化・文政の時代(19世紀初頭)に画家志望の若者が描いた絵日記風のメモ帳を入手されていました。そこには当時、すでに高い評価を得ている日本画の大家(たいか)に仕え、雑用をこなしながら絵を学ぼうとする若者の自画像が描かれており、わが国の昔からの徒弟制度の雰囲気がよく伝わってくるものでした。

  • 人々が決められた時間と場所に集うことで芸術が創り出されてきた

欧米ではもともと都会の大学など、特別な場に行かねば若者の学びの場はなかったそうですが、そもそも大学がなかった江戸時代までの日本では、さまざまな伝(つて)をたどって師匠に弟子入りし、その人間関係に交わりながら学ぶのが一般的だったようです。

前出の画家修行の若者は、絵の師匠とその顧客である資産家との会食の場で給仕役をしながら、実際に師の描画を見たり会話に加わったりして、日本画の技術習得に努める自分を描いていました。師匠も絵心のある客人も、また見習いの若者も、関係者すべてがその場に集って情報交換をすることで、お互いの識見をより高め合うとともに、時流や顧客ニーズの把握をしていたものと推察されました。

  • 古典知が創造の基盤として伝えられた

古典知とは「書によって伝えられた技能や感性」のことで、日本では多くの書に蓄積されたデッサン画や文章などによって、先人たちの技能や感性を習得することができる環境が整えられてきたという書物類が示されました。そうした書を介して先人らの創作した文化作品がお手本とされ、後進たちに技能が受け継がれてきたというわが国独特の伝統があったことに気づかされました。

キャンベルさんが館長をお務めの国文学研究資料館には、「新日本古典籍総合データベース」があり、こうした古い時代の日本の書籍を集約し、日本の芸術文化分野での技能や感性が末永く伝えられてゆくような環境整備を進めておられるとのお話でした。

 

キャンベルさんは「日本の学校では、これからアクティブラーニングが始められます。自らの問いかけを自らの学びを通じて解決してゆく際、先生のご指導によってそのよき方法を見出していただきたいものですが、古典知から多くを学ぶということを大切にしてください」と結ばれました。

国際競争の渦中にあって、日本人であるわれわれが他の国とは異なる新たな創造性を発揮し、独自の地位を獲得しようとするのであれば、キャンベルさんがおっしゃられた私たち日本人独自の「学ぶ、創る、伝える」を一連(ひとつら)なりとした伝統を大切にしてゆくことがポイントになるものと思われました。そしてそのためには、一方的な情報「発信」ではなく、周囲の人々と双方向で語り合える情報の「交信」こそが重要だということも教えていただけました。

私にはこうしたお話が、市政運営のヒントにもなると感じました。広報紙や公式Webサイトでの一方的な情報発信で自己満足することなく、その情報が真に市民ニーズにかなっているのかどうなのか。また、そうした情報を市民の皆さんがどのように理解しておいでなのかを、いろいろな情報交換の機会を通じて確認しながら、市政の改善・改革につなげてゆくという姿勢を持つことが大切と受け止めました。

さらに、これからの長い歴史の中でも、大きな経済変動や自然災害など不測の事態が発生すれば、時代の空気や世相がさま変わりをすることがあります。しかし、その時代にかなった行財政運営について、長期保存がきく記録として残しておくことで、後世の人たちへの貴重な教訓となって語り継がれてゆくことを再認識いたしました。

キャンベルさんのお話を、単に日本の古典文学の講義としての理解にとどめず、地域社会に生きる私たちも、歴史とともに受け継がれてきた伝統文化や地域性を正しく理解し、より良好な社会コミュニケーションへと発展させてゆかねばなりません。そうした行為の積み重ねが、その地に根差した独特の伝統文化になってゆくのでしょう。

日本文学研究者のロバート キャンベルさんと一緒に

【講師のロバート キャンベルさんと一緒に】

 

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