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更新日:2010年8月18日
8月に入り、久しぶりに小学生から市長への質問のメールをもらいました。市内小学校6年のT君からの質問でした。
こんにちは。
ぼくは今、夏休みの自由研究で市長の仕事について調べています。市をまとめる市長はどんな人なのか知りたかったからです。毎日の市長の動きは、安城市のホームページでわかりますが、ホームページだけじゃ、わからない事があるので以下の質問に答えてもらえませんか。
お忙しいなかどうかよろしくお願いします。
ほほえましくも難しい質問で頭を悩ませましたが、項目ごとにこんな回答をまとめてみました。
私は、とても体の弱い子供でした。そのためかぜをひいて熱を出し、学校を休むことが多かった記憶があります。また小学校6年と中学3年の時に、それぞれ急性肺炎と急性気管支炎で1ヶ月ずつ学校を休まざるを得ませんでした。
そのためもともと成績は悪くはありませんでしたが、病気のために学校を休んだ後は成績が下がりました。特に中3の病欠により、希望する高校への進学はあきらめざるを得ず、とても悔しい思い出です。そんな子供でしたので、健康な子、運動のできる子をうらやましく思う、目立たないおとなしい子供でした。
私は大学で4年間農学(農業の勉強)をしたので、農業関係の仕事につくことを希望していました。大学卒業後、長野県の八ヶ岳という山のふもとにある農業専門学校で研究生として1年間勉強をし、そのままその学校の先生になり、高校を卒業してきた生徒らに農業の勉強を教えていました。
家はもともと専業農家だったので、結婚と同時に家に帰り農業で頑張るつもりでしたが、家の手伝いを始めて間もなく市議会議員になってはどうかという話があり、28歳で安城市の市議会議員になりました。

人にはいろいろな生き方がありますが、どんな生き方が最も価値があるのだろうかと、最初に市議会議員に立候補する時に、自分なりにしっかりと考えました。家で農業の仕事をすることにも価値がありますが、一生懸命働いて幸せにできるのは5人の家族に過ぎません。しかし、市議会の仕事をしっかり頑張れば、18万人の市民を幸せにすることが可能になると気がつきました。
5人の家族の幸せのために生きる人生と、18万人の市民の幸せのために生きる人生。どちらの人生に価値があるのか。それを考え、私は18万人の幸せのために生きるという選択をし、市議会議員に立候補しました。その後16年近く市議会議員として活躍するうち、安城市の財政的な危機を強く心配する時代になりました。周りの人たちの強い勧めもあり、平成15年に市長に立候補しました。
日本の市長の立場はアメリカの大統領制をモデルに考えられており、強い権限が与えられるため意思の決定から実行まで、一市議会議員の立場に比べてとても早くなります。もちろん市長の提案には市議会の同意が必要なのですが、市民に直接選ばれた市長の意思というものを市議会も一目置かねばならないため、市長になることで自分の考えによる行政改革がより実現しやすくなると考えました。
そもそも私は18万人市民の幸せ実現に努めたいと考えていましたので、幸せな市民生活のお世話ができたと実感できた時、市長になってよかったと思います。市民の皆さんから「新しい道路が開通して、交通渋滞がなくなった」とか、「子供の医療費、中学を卒業するまで無料となり本当に助かります」などという声が私の元に届けられると、苦労してあれこれ考え実行してよかったと、そんな瞬間に市長としてのやりがいを感じます。
世界の中には多くの国がありますが、私はいろんな問題を抱えながらも、日本は幸せな国だと思っています。そんな日本の中にあって、私たちの住む西三河は産業が発展したおかげで、市民生活も、行政サービスもかなり恵まれた状態にあります。日本や西三河地域がこんなにも発展したのは、血のにじむような苦労をされ、新しい知識や技術を外国に学び、日本を世界の先進国の仲間入りをさせてくださった多くの先人の努力のおかげです。それを忘れて現状に甘えてしまうと、日本の国家も、また私たちの地域も、現在の世界的な大きな変化への対応に遅れてしまう可能性があります。
先日、私は中国に行き万博や産業の見学をしてきましたが、中国の「日本に追いつけ追い越せ」の勢いのすごさに驚かされました。中国はまだ発展途上だという印象があったのですが、大都市に関しては日本の都会と何ら変わらないほどに整備され、巨大なビルが立ち並んでいました。中国はアジアの先進国日本についてさまざまな研究をし、日本の良いところ、悪いところをよく理解したうえで、日本と同じ豊かさを手にするため、猛烈に働いているように見えました。

一方の日本はどうなのでしょう。現状に満足して、今以上に学び働くことを嫌い始めているような気がしてなりません。新しい中国の現実を見て、私は「ウサギと亀」の物語を思い出しました。足の速いウサギはずいぶん遠くまで走ってきたつもりでしたが、気がつくと巨大な亀が間近に迫っているのです。大きな亀に踏みつぶされないように、再び駆け出さなければならないのですが、そのファイトがあるのかどうかが問われているように思われます。
これから大きくなってゆく小学生の皆さんは、日本国内の出来事だけでなく、世界のようすについても関心を持ってもらいたいです。国際的な視野を養いつつ、日本のよい点を海外に紹介できるようになってもらえたらと願います。
小学生にとって地方行政機関のトップを務める市長のイメージは、もっとすごいスーパーマンのような人物を想像していたのかもしれませんが、七転び八起きの中で悩みながら生きてきた普通のおじさんと知り、T君はがっかりしたのではないかといささか心配をしています。
しかし、人生上のいろいろな失敗や挫折体験から学ぶことは多く、生活に苦しむ方に対する理解や共感というものは、そうした貴重な自己体験の中で養われ生まれてくるものだと実感させられることがあります。
「18万人もの市民お一人お一人の立場や生活を、真に理解し親身になって問題解決を図ってゆくために必要なのは、過去の華やかな成功体験よりも、むしろ苦い失敗体験から学んだことなのではないでしょうか。特にトヨタ・ショック以降、この地域でも厳しい生活環境に置かれた方が増え、そうした立場の方々にどんな救いの手を差し伸べられるかが、今の地方行政に求められています」ということまで伝えたかったのですが、私の文才では小学生に理解できるような文章表現は不可能と悟りました。
そんな難しい話は抜きにして、よい夏休みの宿題ができるようにと祈りつつ、返事を送らせてもらいました。私にとっては楽しかった、夏休みの小学生とのメールのやりとりでした。
安城市長 神谷 学
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