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更新日:2015年4月17日

はなむけの言葉(2015年3月)

3月の卒業シーズン、中学校では安祥中学校、小学校では中部小学校の卒業式に出席しました。卒業式での来賓あいさつというもの、お聞きになる卒業生や保護者の皆さんの中には楽しみにされている方も多いのでしょうが、あいさつに立つこちら側は取り上げるテーマの選択や話の展開など、なかなか頭の痛い課題をクリアせねばならないのが現実です。

そんな訳で今年もずいぶん悩みましたが、本年は色々な意味で歴史的な節目の年を迎えていることもあり、そのことに気づいていただきたく、中学校卒業式では次のようなはなむけの言葉を送らせてもらいました。

中部小学校卒業式の様子

【中部小学校卒業証書授与式の様子】

「安祥中学校を卒業される皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。皆さんは義務教育課程を終えられ、これから新たな世界に進んでゆかれます。今後も、それぞれの分野でしっかり勉強され、ご活躍いただきますことを心よりご期待申し上げます。

さて、今日の安城市発展の歴史的な礎をなしてきたのは明治用水でありますが、今年はその明治用水を計画立案された都築弥厚の生誕250年に当たっています。都築弥厚に関しましては、皆さんすでに郷土の偉人としていろいろ勉強しておられることと思います。

現在の安城市域の大半は、江戸時代までは水の利便が悪い「安城が原」と言われた荒地でした。そのため農業用の水に困り、水を巡る争いが絶えなかったようです。それを見かねた弥厚は、矢作川から水を引く農業用水の開削を思い立ちましたが、その壮大な計画を正しく理解できる人が当時は少なく、私財を投げ打ったものの彼の生前中は計画倒れの状態でした。

明治時代に入り、弥厚の遺志を継いだ方々のご尽力により、明治13年に明治用水に矢作川の水が流れ、その後、安城が原は農地としての開墾が進み、一時は「日本デンマーク」と言われるほどの農業先進地帯として全国から注目を集めました。

都築弥厚自身は、造り酒屋の富豪の家に育ちましたが、明治用水建設で資産を失ったばかりか、計画を実現することなく亡くなってしまいました。果たして彼は、幸せな人だったのでしょうか。

中部小学校卒業証書授与式にて

【中部小学校卒業証書授与式にて】

ところで皆さんは、今年103歳になられる日野原重明先生というお医者さんをご存知でしょうか。昨年の春、安城市でご講演いただきましたし、また子ども向けの本を出され、小中学校で「いのちの授業」を行っておられます。お医者さんであられ、103歳のご長寿ですので、命というものを的確に捉えておいでのことかと思います。

日野原先生は、「命は心臓や脳にあるものではありません。命とは今生きているこの時間そのものだと思います。自分が使える時間を、自分だけのためではなく、人のために使うことが大切です」と述べておられます。

私たちが生きている時間は限られたものですが、その時間で社会的に意義のある行動をすること。それが自らの命に大きな価値をもたらすことになるのではないかと、先生はそうおっしゃられます。

自分に与えられた人生の大半を、用水建設に費やした都築弥厚、彼は死ぬ間際に自らの人生をどう振り返ったかは分かりませんが、大きな歴史の流れから見た時に、彼の生きた時間、つまり彼の命はいかに光り輝いて見えることでしょうか。

今年の一月、死者・行方不明者6,400人を超す被害を出した阪神淡路大震災から、ちょうど20年目を迎えました。また16,000人近い死者・行方不明者を出した東日本大震災発生から、間もなく4年目を迎えることとなります。

これから私たちが生きてゆく時代に、おそらく東海地震等の巨大地震が発生するのではないかと、私は覚悟しています。そう考えれば、私たちの命にも長い時間が保証されている訳ではありません。一瞬一瞬の時間を大切にし、自分自身に与えられた時間をどう周りの人のために、また社会のために役立ててゆくのか。そのことを今日からしっかり考えて、自らの命に大きな価値を持たせられるような人生を歩んで行っていただきたいと願います。

今後の皆さんの人生が、輝かしい価値のあるものとなりますことを心よりお祈り申し上げまして、お祝いのごあいさつとさせていただきます。本日のご卒業、誠におめでとうございます。」

私の市立中学校卒業式への出席は、市内8つの中学をローテーションで回るように組まれていますので、8年に1度のペースで同じ中学校に出席することとなります。今でも私自身は、8年前の安祥中卒業式に出席した際のあいさつを記憶しています。しかし一方、8年も間隔があけば、卒業式会場にお集まりの方々は過去の私のあいさつをご存知ないか、あるいはお忘れになられたであろうと想像していました。

ところが、あいさつを終え校長室に戻る際の廊下で、地元ご来賓のお1人から「市長さんの8年前のあいさつは今でも覚えています。今日はあの時とまったく違った内容のお話でしたね」と声を掛けられ、一瞬、背中を冷たい汗が流れました。実は、8年ぶりに訪れる中学校だったので、また前回と同じあいさつネタを使おうかという思いが、数日前に私の脳裏をよぎっていたのです。しかし、そんな安直な誘惑をふり捨て、若い中学生たちの顔を想像し、時宜にかなったメッセージを自分なりに考え、苦しみながらあいさつ原稿を書き上げました。地元の方のこのひと言で、冷や汗とともに私の苦労は報われたと思いました。

市長初就任後の12年間、主催者や来賓の立場で数えきれないほど多くのあいさつに立ち、さまざまなメッセージを口にしてきました。その結果、私自身でもどこの場でどんな言葉を発したのか、ほとんどはすぐに思い出せないような状態です。にもかかわらず、お聞き下さる方々の中には、私のあいさつを本当にしっかり覚えておられる方がおいでになられ、驚くほど後まで記憶に残していただけているものなのだとしみじみ感心しました。

多忙な公務の重なる季節ではありますが、今後も可能な限り自分自身の思いを込めたメッセージを考え、自らの気持ちを込めた情報発信に努めたいと思います。この春学校を卒業された学生たちや、これをお読みくださった皆さまが、新たなよき新年度をお迎えになられますことを心よりご祈念申し上げます。

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