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更新日:2013年8月15日

お帰りなさい南吉先生(2013年7月)

新美南吉は、半田の生まれであり、半田の育ちです。しかし、彼は24歳の昭和13年から、29歳で亡くなる直前の昭和18年までの5年間、当時安城のまちにあった安城高等女学校の教員として、このまちに暮らしこのまちで働いていました。ところが、そのことは全国的にあまり知られていないのが現実のようで、私はかねてからとても残念に思ってきました。

ところで、今では安城市の市民を中心に、少しずつ知られつつあると思われます安城市の「新美南吉まちづくり」ですが、そもそもの発端は今から4年ほど前に開催された国土交通省主催の会議にさかのぼります。東海4県(愛知、岐阜、三重、静岡)を代表する市町村長と、国交省の幹部の方々との意見交換の場として、その会議は名古屋市内の国交省中部整備局内で開催されました。

主なテーマは各市町の都市基盤整備についてでしたが、会議の最後に自由な意見交換の時間がとられましたので、私は「現在、手がけ始めた南明治地区の区画整理事業で新しい安城の顔づくりを進めたいのですが、新美南吉にゆかりの深い地域なので彼の童話をまちづくり取り入れたいと考えています」と発言しました。それが私の南吉まちづくりへの第一声だったのですが、その席では他の首長の発言も続きましたので、私の声はその場で聞き流されたものと思っていました。

しかし、その後の懇親会の席で、会議を傍聴しておられた国交省の若い女性課長から、「先ほどの南吉まちづくりのアイディアは、とても良いと思いました」と声を掛けられ驚きました。正直のところ「お世辞かな…」と思われたので、念のため「私のアイディアのどこが良いと思われるのですか?」とお尋ねしますと、彼女は「新美南吉の『ごんぎつね』は、今や全国の小学生の国語の教科書に採用されており、南吉のまちがあれば多くの子どもたちがそのまちに行ってみたくなると思いますよ」と教えて下さいました。

早速、安城市に戻り教育委員会に「ごんぎつね」の教科書への採用状況を尋ねますと、今では全国の小学4年生の国語の教科書に掲載されているということが判明しました。しかもインターネットで新美南吉を調べてみますと、あと4年ほどで生誕百年がやって来るということも分かりました。

今から生誕百年記念事業を準備すれば、まだ間に合うことに気づき、副市長、教育長らにも私の率直な考えを伝え、まずは子どもから大人まで幅広い世代の市民を巻き込む形で、安城での新美南吉の足跡を知っていただく運動から始めようという話になりました。子どもたちや若者たちは、小学時代の国語の時間に新美南吉の作品を勉強していますので、南吉についてある一定の理解はあるのでしょうが、その他の大人の人たちはどうなのかが心配されたのです。

「新美南吉生誕百年

【「新美南吉生誕百年 記念献立」の給食を実施しました】

南吉の「ごんぎつね」が、この地域の小学4年生の国語の教科書に採用されたのは昭和40年代の前半とお聞きしました。ちょうど55歳を迎えた私の年代から南吉童話が教科書で教えられるようになったということですので、50代半ば以下の年齢の方々は新美南吉に親しみを覚えやすいのでしょうが、50代半ば以上の方々は親近感を覚えない状況に置かれていることになり、こうした世代間の認識格差をどうするのかが大きな課題になっています。

また、人口が増え続けている安城市です。本市に移り住まれた新しい方々の中には、「新美南吉は知っているけど、安城市との関わりが分からない」という方もたくさんおられると推察されます。こうした新市民の皆さんへの理解をどう広めてゆくのかも大きな課題と思われました。

そんな訳で、広く市民の皆さんへのご理解を得ること。またすでに理解のある世代には、より南吉への親しみを感じていただくこと。それらを念頭に、市として可能な限りのPR活動を展開してきたつもりでおります。具体的に私たちの取り組みの主なものを列記しますと

  • 「あんくるバス」車体への南吉童話のラッピング
  • 学校教育で新美南吉を教材として活用
  • 中心市街地での新美南吉ウォールペイント
  • 新美南吉絵本大賞の公募による絵本の発刊
  • 南吉体操・南吉音頭の創作と子どもらへの普及
  • 生誕百年を記念して各種記念事業の開催

「南吉探訪スタンプラリー」の協力を半田市長にお願いしました

【「南吉探訪スタンプラリー」の協力を半田市長にお願いしました】

その他にもいろいろな取り組みがありますが、詳しくは以下のウェブサイトをご覧ください。

新美南吉のまちづくり

ところで、私たちの地域はかねてより「文化不毛の地」と揶揄(やゆ)されてきていたように思われますが、実際のところはそうでもないと感じていました。田村響さん、後藤正孝さんといった世界的なピアニストが本市から誕生していますし、文化協会などを中心にさまざまな芸術文化活動が展開されています。

しかし一方、自動車産業を中心とした工業が盛んな地域として発展する過程で、合理性や実利性を重視する風潮は他の地域より強いものになっていると思われ、そんな表層的な印象から文化不毛というイメージが流布されてしまっていたのではないかと考えます。

私は新美南吉をテーマとしたまちづくりを、この不名誉なイメージを変えてゆく一つのきっかけとしたいと考え、また経済だけではなく精神文化の面でも豊かな地域といわれるような都市環境づくりを進めたいと願っています。

すでに市内の各小中学校では、南吉文学を題材とした朗読や作文、さらに音楽での合唱が行われている他、図画工作による南吉童話の世界表現など、さまざまな取り組みが進められています。こうした子どもたちの学校での学びの他、まち中では地元の若者を中心としたウォールペイントの描画活動も展開されてきており、特にウォールペイントは新たな都市景観づくりの一環として注目を集めつつあるようです。彼らが描いたウォールペイントは現在25枚、「平成25年度」にちなんで覚えやすい枚数に揃えてみました。時間の許される方々には、25枚の作品の探索をしていただきたいと思います。そして、自分なりに気にいった作品、面白そうな作品を見つけ、ご自身の心の癒しの空間を見出していただけたらと願っています。

ウォールペイントの仕上げの一塗りを行いました

【ウォールペイントの仕上げの一塗りを行いました】

新美南吉の作品には、有名な「ごんぎつね」や「手袋を買いに」の他にもいくつもの優れた作品があります。安城市を訪れた方々に南吉童話の新たな魅力を発見していただき、南吉文学により親しんでいただくことを通じて、人としての「真の優しさ」や不可欠な「倫理感覚」というものが世代を問わず涵養(かんよう)されてゆくことを願っています。

「お帰りなさい南吉先生!」。そんな気持ちを込めて、新美南吉生誕百年を通じて「安城の新美南吉」の足跡が広く全国的に認知していただければ、このプロジェクトは成功と言えるのではないかと考えています。多くの市民の皆さんのご参加とご協力をお願い申し上げます。

安城市長 神谷 学

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