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更新日:2013年7月22日

幸せリーグ(市民総幸福度という視点)(2013年6月)

6月5日(水曜日)の夕方、東京都荒川区で開催された通称「幸せリーグ」の設立総会に出席してまいりました。幸せリーグとは、別名「住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体連合」とされており、参加する自治体(市町村)それぞれが住民の幸福度向上を目指して、情報交換や交流をしてゆこうとするものです。通称の「リーグ」から野球のリーグ戦をイメージされるのか、市町村同士が幸福度の競争をする集団のように誤解をされる方がおみえになりましたが、決してそうではありません。

そもそも参加している自治体は、北は北海道・東北地方から始まり、南は四国・九州までの52市町村ですので、山間地から海岸部、首都圏もあれば都市近郊、さらに過疎に悩む地域も包含しており、それぞれの地域がそれぞれの社会条件や地域の風土に叶った幸せなまちづくりをどう実現するかにあります。よって通称名の「League(リーグ)」の意味は、スポーツの競技連盟ではなく、単純に団体や仲間と受け止めるべきでしょう。

東海3県では岐阜県からは大垣市、三重県では松阪市・亀山市、愛知県からは安城市の他に豊田市・長久手市・武豊町が、設立の段階から参加をしています。

幸せリーグ設立総会の様子

【「幸せリーグ」設立総会の様子】

安城市の場合は、現在進めてきております第7次総合計画「市民とともに育む環境首都・安城」の計画期間が、平成17年度~平成26年度とされており、間もなく計画期間の終了を迎えます。よって、その後の新しい総合計画の都市像をまとめるとともに、その都市像を実現することで市民が幸福を実感できるまちにできないかと考え、最初の一歩を踏み入れたところです。

もちろん現在の総合計画に関しては、数年に一度の市民アンケート調査をし、それによって行政計画の進捗度や、「住みよさ」の満足度を把握しており、市民ニーズとずれた方向にあるとは思われません。しかし、私たちの行政計画の進捗と市民の幸福実感とに、ずれはないと言い切れるだけの明確な根拠がないのも事実です。

その一つの事例として、市民アンケートでは90%を超える方々が、安城市は「住みよい」もしくは「どちらかといえば住みよい」とされている良好な住民満足度をいただきながらも、あの春先の連続放火事件が発生したことが挙げられます。犯人の男は、自らの孤独な境遇からの逃避行動として、連続放火に走ったと言われています。あの事件はごく特殊な例だとは思われますが、それでも市民アンケート結果や日常の行政活動から見落としていた不幸な生活があったのだと考えさせられます。いかにして地域社会の中の死角を作らないようにするか、それが問われています。

全ての市民の幸せに貢献するというのが私の願いです。現実には、それは不可能に近いとは承知していますが、それでも今以上に一人ひとりの市民の幸せ実現に手を差し伸べられる行政を目指すとすれば、今回参加をした「幸せリーグ」が提唱する幸福度という考え方を、これから策定してゆく長期の行政計画に盛り込んでゆくべきであろうと考えたのです。

幸せリーグに参加の自治体の皆さん

【「幸せリーグ」参加の自治体の皆さん】

ブータンの国王が今から37年前(1976年)に世界に向けて提唱された「GNP(gross national product)からGNH(gross national happiness)へ」というかけ声は、オイルショックから立ち直るのに精一杯であった先進諸国の耳には届かなかったようです。しかしその後、経済的な繁栄を遂げてもなおさまざまな社会病理に直面し続けた先進諸国でも、ようやくこのことばの真意が理解され、その理念は注目されつつあるようです。

日本では東京都荒川区が、すでに9年前からこうした視点を地方行政計画に取り入れることに着目され、「GAH(gross arakawa happiness)」という荒川区独特の幸福度指数を用いられ行政運営に活かされている他、大学や政府機関でも研究が進められているようです。

荒川区長の過去の講演録から、いくつかの要点を拾い出してみますと以下のようになります。(原文の「区」を「市」に置き換えています)

  • 「市政は市民を幸せにするシステムである」という事業領域の設定

まずは行政職員が、自らの仕事そのものへの共通概念を持つことから始めようとの考えから、改めてこうした地方自治体の使命の定義づけをされたようです。

  • 市民総幸福度による行政評価の確立

以前の行政評価では「公園を何か所整備したか」、「講座は何回開催したか」などの数字の説明が求められ、もっぱらその回数による評価が行われてきていましたが、今後はこうした施策がどれだけ住民の幸福実感に寄与できたかという視点からの評価に変えられつつあります。

  • 市民総幸福度を向上させる取り組み

具体的な取り組みとしては、子どもの安全・見守り、健康な食生活の実現、自主防災活動への支援、就労支援、人財育成などで、安城市でも行われているような施策の事例が挙げられています。しかし、これらの取り組みについて、事前に区民の幸福観に関する意識調査が実施されており、その結果を基に重要度に応じた問題整理がなされ、区役所と地域の大学や各種団体との議論が重ねられます。こうした身近な関係団体という地域資源を最大限に活かし合う形で、市民との共通認識の下で新たな課題解決に取り組んでおられます。

荒川区で取り組んでおられる施策そのものは、他の自治体と大きく変わらないように見えますが、大きな違いは行政が住民の幸福観をきちんと把握できていること。そして、一つ一つの施策が、住民の幸せにどう貢献できるのかがよく考えられており、住民と行政、さらに関係団体が幸福観を共有し合った上で事業を実施されているというところが大きな特長です。

幸せリーグの総会は限られた時間でしたが、顧問の東大名誉教授の月尾嘉男先生から、現代社会の幸福について貴重なご講演をいただけましたので、以下に要点をまとめました。

  • 物質的な豊かさと幸福感は比例するものではない

地球上には栄養過多と栄養失調が、共に存在しています。幸せそうな栄養過多社会の住民は、減量のための運動を求められ、それでも医療費拡大が深刻化するという皮肉な状況が生じています。

  • 幸福惑星指数というものを経済学者が考案している

(月尾先生は参考までにということでしたが、下記のような数式でした)

生活満足度×平均寿命

生態学的足跡 ※生態学的足跡とは、主に環境負荷を表すようです。

「生活満足度」の中には経済的な要素は入るのでしょうが、それだけではなく人間関係や家庭などいろいろな要素もありそうです。また「平均寿命」は健康状態や衛生状態、さらに日常の食生活や運動も関係しそうです。また分母にある「生態学的足跡」つまり環境負荷は、生活や労働の環境に深く関わりがありそうです。

  • 中央集権から地域主権へ

中央集権的な行政システムでは、個々人の幸福な生活にまで手を差し伸べることができません。よって、住民に最も身近な地方行政が主体となって住民幸福の実現を図るべきということです。

月尾先生のご講演では最後に、欲望が肥大化した現代社会の対極として、縮小文化の象徴ともいえる「茶道」の紹介がありました。小さな茶碗の中に宇宙を透視することで、大きな満足を得るという日本古来の豊かな思想があったのです。

この茶碗の中に宇宙を・・・・・

【この茶碗の中に宇宙を・・・・・】

また、「吾唯知足」という少欲知足を意味することばも耳にでき、学生時代から禅寺へ参禅していた私にはしっくりと来るお話を、ずいぶん懐かしい思いでお聞きすることができました。

私たちの幸福社会の実現への鍵は、日本を始めとする伝統的な東洋思想の中に眠っているような気がしました。今後はこうした視点から、安城市版の幸福指数のあり方を考えてゆきたいと思っています。

安城市長 神谷 学

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