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更新日:2013年6月20日

文化の力で未来を拓く

文化についてあれこれ講釈できるほどの高尚な人間ではない私が、文化に関してここに一筆啓上する無礼を恥じつつも、最近の2つの出来事を中心に私自身の思いを記しました。

出来事1・文化のまちづくり(中心市街地)

6月14日(木曜日)、中心市街地拠点施設フォーラムを開催し、現在の交流広場(旧更生病院跡地)の活用のあり方についての議論を行いました。

中心市街地拠点施設フォーラムでの市長報告の様子

  【中心市街地拠点施設フォーラムでの市長報告の様子】

以下は、当日お話しました私の中心市街地まちづくりの基本的な考えです。

・更生病院移転から今までの取り組み

平成14年春、更生病院が現在の市街地郊外に移転しました。旧更生病院は3千人/日の集客性があると言われていましたので、病院移転の後、中心市街地の人出は極端に減少し、それによる空き店舗が目立つようになり、進出が目立つようになってきたのが風俗店でした。まちの雰囲気は以前とは大きく変わり、女性が歩くのが躊躇されるようになり、多くのご心配の声をお聞きしました。

そこで空き店舗を作らないように、若い人たちのチャレンジ・ショップなどの開店支援策を講じました。しかし、何人かの人たちが起業に挑戦されましたが、残念ながら撤退してしまう事例もあり、まちの活性化が図れたと言える状況にはありません。

よって真にまちの活力再生を願うのであれば、こうした対処療法的な政策の継続ではなく、やはり交流広場を活用した根本的な活力の核となるものを作らねばならないということで、それが私たちのこの10年間の試行錯誤の結論です。

・拠点施設の特色について

今回の私たちが考えた拠点施設は、安城市では初の本格的な官民協働による開発であり、また市街地活性化策となります。このプロジェクトに参加される民間企業にとってメリットを生み出すのはもちろんですが、市街地活性化に貢献いただく「まちづくり会社」にもメリットを共有していただき、事業から得た利益を新たなまちの活性化に還元できるよき官民の共存関係を生み出してゆきたいと願っています。

公共施設に関しては、図書館と多目的ホールを考えていますが、図書館ではICTを駆使したハイブリッド図書館とし、幅広い年代の市民から愛され、また電子媒体の活用に関しては全国モデルとなるような意気込みで、新しい施設計画を進めたいと考えています。また多目的ホールは、各種団体や市民の皆さんに気軽にご利用いただき、芸術・文化さらに軽スポーツなどに利用いただくことで、楽しい催しが継続する空間にしてゆきたいと思います。

また「新しい最先端の世界」と「昔ながらの人の交流」が共存する、そういう意味でも異質のものが混在するハイブリッド・タイプの公共施設といえると思っています。

一方、市街地で暮らす方々への朗報としては、今後は日常の買い物に苦労することはなくなりますということをお伝えしたいと思います。民間との協働では、民間側に主としてこの地域に暮らす方々への地域密着型のサービスをしてもらうことを中心に考えます。

・拠点施設とまちとのつながり

拠点施設とまちのつながりについては、中心市街地ではすでに新美南吉生誕100年に合わせて、南吉童話の世界を中心としたまちづくりを始めています。またJR安城駅からデンパークに向けての道路ではモニュメントが並び、すでにアンデルセン童話の世界が創出されています。

デンマークの童話作家のアンデルセンと、日本の童話作家の新美南吉の組み合わせに違和感を覚える方もおいででしょうが、実は新美南吉が安城で暮らしていた昭和初期、安城は「日本デンマーク」と呼ばれていました。また彼は生前中、自身が「日本のアンデルセン」と呼ばれることを夢見ていたそうです。

この拠点施設がこうした童話の世界の中核に位置することで、図書館に訪れる方が童話の世界を通過され、また童話の世界に訪れた方々が図書館に立ち寄られる形で、まちと拠点施設による相乗効果が生み出せたらありがたいと考えています。そんな訳で南吉の世界は、まだまだ緒に就いたにすぎませんが、これからさらに色々な展開を図ってゆきたいと思います。

私の勝手なイメージなのですが、区画整理事業による新しい街並みについては、南吉がこのまちで青春時代を過ごした昭和の初期、つまり安城市が「日本デンマーク」と呼ばれた時代を髣髴させるようなレトロ調の景観に統一できたらいいなと願っています。

まちづくりや拠点づくりを語る自分たち自身が、わくわくする楽しいまちづくりを目指すことが、多くの方々の来訪につながるものと考えています。

 

日本は大きな時代の転機を迎えつつあるように感じられます。子どもたちの未来に、私たちは責任ある大人として何を残せるのか。それをしっかり考えねばなりません。

高度経済成長時代のような大きな文化遺産は残せないまでも、未来に向けての夢や希望、生きてゆく上での真に大切な心を次世代に伝えてゆく責務があります。安城の子どもたちは、それらをアンデルセンや南吉童話の中から学び取ってもらいたいと思います。またそれと合わせて未来を構築してゆくための新たな知性を育む環境づくりも重要と考えました。

そうした理念の延長線上に中心市街地まちづくりと、地域文化の拠点となる施設の建設を進めたい。私はそう考えています。

 

出来事2・文字書きからくり人形

6月15日、文字書きからくり人形複製品の完成披露報告会を開催しました。

このからくり人形は平成21年の春、安城市古井町で古い民家を建て替える折に発見されたものです。発見当初は所有しておられた家の方も、市の文化財担当者も、それが何で、どのような文化財としての価値があるのか分からなかったのですが、国の専門機関で鑑定をしていただいた結果、発見された人形が江戸時代末期につくられた貴重な文字書きからくり人形であることが判明しました。

このからくり人形は、左手にした「梅」の透かしの入った用紙に、右手に持つ筆で「松」、さらに口にくわえた筆で「竹」の文字を書くものです。1回の動作で2文字を同時に書ける、こうした文字書きからくり人形は国内では他に例がないそうです。

人形が表現する松・竹・梅はそれぞれ、冬の厳しい寒さに耐え抜き成長を続ける植物であり、縁起の良いもののたとえとされています。何かと明るいニュースの少ない世相と感じられますが、それだけにこうした可愛らしくもあり、また昔の職人気質を偲ばせるからくり人形の紹介が、明るい縁起の良いニュースとして取り上げられることを願います。

平成21年に発見された、江戸時代末期の文字書きからくり人形

  【江戸時代末期の文字書きからくり人形】

複製された文字書きからくり人形

      【複製された文字書きからくり人形】   

今回の貴重なからくり人形の発見直後、その取扱いの内部協議に時間を要しました。約150年も前に製作された傷みの激しいからくり人形を修理して動かすのか、あるいはその複製品を作りそれによって本物の動きを再現し、本物はそのまま保存して文化財としての価値を保つのかの判断が難しかったのです。

結論は後者に落ち着き、現物は手を加えずに文化財的な価値を保ち、からくり人形の実際の動きは複製品によってご覧いただくということになりました。

150年も前の匠の技の再現は、名古屋市ご在住の九代目からくり人形師・玉屋庄兵衛さまにお願いしました。この九代目にして「これまでにない難しさ」と言わしめた複雑な文字書きからくり人形の複製づくりは、大変なご苦労が伴ったため約2年の歳月を要する大仕事になったと伺いました。複製からくり人形は、本物発見から約3年後の6月15日、関係の皆さんにようやく披露をすることができました。

私は当初、物珍しさを伴う軽い気持ちでその披露式典会場に足を運んだのですが、名人のご苦労話をお聞きし、精魂込めて制作された童子姿のからくり人形が「松」と「竹」の2文字を書くのを見た瞬間、とても深い感動を覚えてしまいました。

ハイテクの技術は何も使わない、伝統的な匠の技による手作りの木製からくり人形です。職人がそこに込めた情熱を、幼気な人形が全身で表現するさまにはただただ感動するばかりで、会場からは私と同様の惜しみない拍手が湧きあがりました。

この文字書きからくり人形は、今年の夏休みに一般公開されます。多くの子どもたちにデジタルのゲーム機器とは違った感動をしてもらい、自分の頭と体を使い自然の素材で無から有を創り出すことの楽しみを知ってもらえたらと、このからくり人形に大きな期待をしています。

 

不透明感の強いこれからの時代、改めてこの地に根差した文化を再評価し、そこから育まれる郷土愛により、まちの活力再生を図るべきではないか。私は最近、そう考えるようになりました。

                                                                                              安城市長    神谷  学 

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