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更新日:2013年6月20日

わがまちの還暦に思う

今から9年ほど前の平成15年2月、私は安城市長に就任しました。就任と同時に考えねばならなかったのは、平成17年度から始まる予定の新しい10カ年の総合計画の目指す都市像を何にするかということでした。どこの都市でも同様でしょうが、総合計画は総花的な内容のため、目指す都市像は耳触りのよい抽象的なことばの羅列という印象があります。

一人前の都市と評価されるため、ある一定の公共施設を揃えてゆくという底上げが必要な時代の都市政策は、全ての施策に全力投入という姿勢でよかったと思われます。しかし、ある一定レベルの都市機能が備われば、やがて他の都市との差異を明確にし、まちの個性を大切にしてゆく必要が生じると考えます。

私が市長に就任した頃の安城市は、まさにそうした転換期を迎えていると感じられました。市民アンケートでは市民の90%ほどが「住みよい」と答えて下さるような暮らしやすいまちにもかかわらず、自らのまちの魅力や特徴を遠方からの来客に説明するのに、明快に語れないもどかしさを払しょくできないものか。そう考えてあれこれ頭をひねりました。

日本人にはなかなか理解しにくい外来の概念で、「アィデンティティー」ということばがあります。大変意味深長で重要なことばと感じつつも、自分が真にその意味を理解しているのかに確信が持てませんでした。しかし、ある識者から「日本人にはなかなか理解の難しいことばだか、『魂』と受け止めておけばよい」とお聞きし、すっきりと頭の整理ができました。

最も重要なのは、この安城の「魂」と呼ぶべきもの。つまり本市の原点に立ち返り、わがまちを発展させた礎をなすものをきちっと再認識し、多くの市民とその認識を共有することが重要なのではないかと考え、まずは原点を振り返ることとしました。

私たちのまちは明治時代に開削された「明治用水」という農業用水により、それまでの松の生い茂る荒地が開墾され、やがて豊かな農業地帯へ発展した歴史があります。明治期にはその後、国鉄安城駅という物流拠点が開かれ、さらに県立安城農林学校が開校され社会のリーダーが養成されました。

昭和を迎える頃、私たちのまちは農による生活の豊かさ実現により「日本デンマーク」と広く紹介されるようになり、農村振興のため多くの視察者が全国各地から訪れる時代となりました。安城市は温泉地でもないのに芸妓さんが沢山いることを不思議がられますが、多くの視察者をもてなした古き良き日本デンマーク時代の名残ということなのでしょう。

話がそれましたが、私たちのまちの「魂」は、自らの私財を投げ打ち命がけで明治用水を開削してくださった郷土の偉人の方々や、農地開墾のために刻苦勉励を重ねられた先人たちの不屈の精神にあります。農業という自然と共生する産業を通じて発展してきたまち、それが安城市です。

ところが戦後、高度経済成長期が続き、田園都市は間もなく工業都市に変わってゆきます。昭和63年の新幹線駅開業による人口急増もあり、こうした本市の歴史を深く理解する市民ばかりではなくなってきました。

【三河安城駅周辺の様子】

新幹線開通当時の三河安城駅周辺の様子(昭和63年9月)現在の三河安城駅周辺の様子(平成23年2月)

                   (昭和63年9月)                                          (平成23年2月)

今一度、本市の原点をなす社会的な礎、自然と折り合いをつけて生活して来られた先人たち、それぞれに思いを馳せるべく、総合計画の目指す都市像は「市民とともに育む環境首都・安城」とし、平成17年度から環境まちづくりがスタートしました。環境重視の産業政策、ごみ減量30%、都市緑化の推進、公共交通利用促進のためのバス路線・鉄道駅整備、平坦な地形を生かした自転車道整備など、全ての都市政策に環境重視の視点を取り入れ、市民の協力を呼びかけながらさまざまな活動に取り組んできました。

NGO主催の「日本の環境首都コンテスト」の最終成績は全国総合3位にとどまりましたが、3大都市圏内に位置する海も山もない18万都市で、市民との協働の成果が高く評価されたことを嬉しく思います。古からの歴史を振り返り、先人らの精神を現代風に尊重してゆく活動が、本市の環境首都を目指す運動です。環境首都コンテストは終了しましたが、市民とともに環境首都への挑戦は継続中です。

昨年の東日本大震災と、その後の原発の運転停止。私たちの社会は想像もしなかった事態に陥りました。しかし、節電運動や自転車通勤の再評価、代替エネルギーの普及など、今、全国的に始まっている意識改革を、私たちは7年ほど先取りしてきたことに気づかされます。「やがてエネルギー政策を見直す時代が来るのだろう」という私の予測が、こんな不幸な形でこれほど早く訪れるとは想像もできませんでした。

都市政策としての環境施策には、即効性のある切り札がいくつもある訳ではありません。そもそも私たちの先人たちは、どんな心構えで生活され、どんな暮らしをしておられたのだろう。その足跡に思いを馳せて、実行可能なことを一つ一つ積み上げてゆくことが大切だと感じます。

最近はランニングやウォーキングが盛んになってきました。また自転車に乗る若者が増えてきたと感じます。街を走る自動車も、大排気量を競う雰囲気はなくなり、エコな生活に格好よさを感じる時代になりました。かつてのエネルギー浪費の時代に郷愁を感じる人も多いのでしょうが、私はこの逆境をむしろチャンスとみなして、新たな都市基盤やライフスタイルの創造に結び付けたいと考えています。

【デンマーク大使とのサイクリングイベント(平成21年5月)】

デンマーク大使とのサイクリングイベント(平成21年5月)

 

 

大震災を機に国民の意識に大きな変化が生まれつつあるこの時期、本市は市制60周年を迎えることとなりました。今一度、この地域発展の原点に立ち返り、新時代にふさわしい都市のあり方を模索してゆこうと決意を新たにしています。

                                                                                                安城市長    神谷  学 

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