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更新日:2013年6月20日

脱・横割り行政

今回も全国市長会の報告という、やや硬い内容になってしまいました。

11月16、17日と、全国市長会の重要な政策会議に出席しました。国の予算編成が進められるさ中の国と地方の熱い空気に触れ、いろいろ考えさせられました。それを私なりにまとめて記してみました。

2日間のさまざまな会議(HP「市長の動き」参照)の後、国に対する決議と重点提言がまとめられ、私たち全国市長会の正副会長揃って、首相官邸や政党本部に要請活動に出かけました。

藤村内閣官房長官に要請する全国市長会正副会長

                 (藤村内閣官房長官に要請する全国市長会正副会長 )                       

 

決議の項目は以下の4つです。  

【決議】

1東日本大震災からの復旧・復興に関する決議

2東京電力福島第一原子力発電所事故に関する決議

3真の分権型社会の実現を求める決議

4総合的な子育て支援策に関する決議

 

決議をまとめるまでの議論の段階で、東日本大震災被災地の市長さんたちからの「復旧復興現場の声」と「地方分権の必要性」は、とても重く感じられました。私が直接耳にしたのは、次の2つの問題です。

  • 被災地での仮設住宅の建設を県が受け持った場合、施工業者は東京に本社がある大手建設会社になり、地元経済に恩恵が及ばないことが分かった。仮設住宅の建設をする権限を市町村にも持たせ、地元経済に恩恵を与えるべきだ。
  • 国省庁の出先機関が被災地域にあるおかげで、現場に即した災害復旧を進めてもらっている。地方機関のある農水省・国交省の対応は迅速だが、地方機関を持たない文科省や環境庁の動きは悪く、学校校舎の改修や瓦礫処理の遅れが顕著になっている。行革により全国一律で国の出先機関を廃止するのは、災害対策を考えると適切とは思えない。

こうした意見が出てくる背景にあるのは、国と地方それぞれの政治・行政に携わる方々同士の意思疎通の不足でしょう。国と県さらに市町村、それぞれの組織の立場・視野から個別に対応することで、復旧に齟齬(そご)が生じかねないような現実が垣間見えたような気がしました。

「船頭多くして船山に登る」ということばを思い出します。国家の危機ともいうべき時、全権を持つリーダーは必要最小の数に絞り込み、現場や地元の状況が分かる人たちの意見を尊重する必要性を覚えました。

 

決議や提言をまとめる議論の中で繰り返し取り上げられたテーマは、主に「子育て支援策」、「自動車の車体課税」、「社会保障・税一体改革」の3つです。詳細までは書ききれませんが、ごく簡単に言えば「国民が納めた税金を国と地方が、3つのテーマに関してどんな割合で分け合うのか」を巡って、両者の激しいせめぎ合いが始まりつつあることが分かりました。詰まるところ浮き彫りとなったのは、国と地方の財政の危機的な状況です。

平成22年度の安城市の決算は、かなり厳しいものになりましたが、本市の場合はまだ財政的な健全性が保たれ、財政自立ができているといえます。

しかし、今や全国809市の中で、財政の健全性が保たれているのはわずか40市と、全体の5%程度に過ぎません。国も財政危機を迎えていますが、道府県、市町村のほとんども財政は危機的状態にあり、税収の按分方法を巡って熾烈(しれつ)な綱引きが行われるのは、当然と言えば当然なのでしょう。

しかし、国は国民のため、地方は県民・市民のためという大義はあるものの、国民も県民も市民も、それぞれ一括(ひとくく)りにする単位が異なるだけで、結局のところ同じ人たちを指します。国・県・市の各機関の、どの段階でどんな形の行政サービスを提供することが、最も効果的であり、個々の住民の幸福実現につながるのか。一番のポイントは、そこのところと思われます。

 

今回、多くの論議の過程で学識者(神野直彦東大名誉教授)からも、貴重なお話を伺うことができました。

日本の社会は「重工業を基軸とする工業社会」から「ソフト産業機軸の知識社会」へと大きく様変わりをしつつあり、それにつれて社会の中で女性の社会進出が進み、男女の役割分担も変わってきている。そうした大きな社会変化にふさわしい行政サービスのあり方の見直しが求められているという内容でした。

国民が家庭と職場の間を長距離通勤し、時に遠隔地への転勤もある日本社会では、広域的なエリアで均一に行うべき行政サービス、狭いエリアできめ細かく行うべき行政サービス、それぞれの性格や必要性が変わってきており、今ここで中央政府と地方政府の役割を根本から見直し、それに合致した税源の配分を考える必要があるのではないかということをご教授いただきました。

 

現在は、中央政府と地方政府の役割分担を時代にかなったものに変えてゆこうとする、その過渡的な段階にあるため、国と地方が古い固定観念による縄張り争いをしているように見えてしまいます。国の省庁ごとの縄張り争いが「縦割り行政」というならば、中央政府と地方政府の縄張り争いは「横割り行政」とでもいうのでしょうか。

東日本大震災からの復興が急がれ、また世界的な経済危機を迎えつつあります。議論を尽くすのは重要なことですが、一方、時代の変化に対応できるスピードも重要です。「あの時、もっと早く手を打っておけば…」と、将来に禍根を残さないようにせねばなりません。

しかし、東京での議論に参加をしていると、厳しい財政状況での国の予算編成を控えた季節ということもあるのでしょうが、省庁間の縦割りと、中央と地方との横割り、さらに政党間の確執もあるようで、国家の求心力はどこに働いているのだろうかと不安を感じてしまいました。

私たち日本人は、東日本大震災から何を学んだのでしょうか。一人一人の人間の力は小さいけれど、国を挙げて皆で力を合わせれば、大きな力が発揮できるという「絆」の大切さだったのだと思います。国全体が「日本の復興」という重要テーマの下に新たな絆を結び合い、大きな求心力が生まれるような状況を創り出してゆくべきでしょう。

全国市長会の一介の役員として、できることは限られているのは承知の上で、それでも自分に何ができるのかを考え、行動してゆきます。

                                                                                                安城市長  神谷  学

 

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