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更新日:2014年4月21日

巣立つ皆さんへ(2014年3月)

春を迎えました。この春、学校を卒業された皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。また新たに社会人となる皆さん、ご就職誠におめでとうございます。お一人お一人、不安や希望を抱いての巣立ちがあるのでしょうが、何かの参考になればと思い35年ほど前の私の思い出話を綴(つづ)ってみました。

 

大学時代、私は東京農業大学で農学を勉強していましたので、4年間、世田谷での東京暮らしをしていました。下宿先から電車で20分ほどに新宿の繁華街があり、当時の副都心では高層ビルが次々に建てられていました。こんな大都会の象徴のような場所で社会勉強ができないかと考え、大学1年の秋、短期間でしたが超高層ホテルの洗い場のアルバイトに採用してもらいました。

新宿副都心の高層ビル

【新宿副都心の高層ビル】

私と一緒に採用されたのは3人、その中に内藤さんという背の高い方がいました。私より3歳ほど年上で、私から見るとやや強面(こわもて)の無口な人で、日大の芸術学部に通っていました。芸術学部といっても、音楽や美術を専攻している雰囲気ではなかったので、何を勉強しているのか尋ねましたところ、演劇を勉強しているということでした。

当時、私の周りに演劇を勉強する知り合いはおらず、一体この人は将来、どんな仕事をするつもりなのだろうかとお聞きしたところ、ぶっきらぼうに「役者だよ」という返事が返って来て、大変驚いてしまいました。その時代の俳優さんといえば、いわゆる二枚目でハンサムな方が多く、内藤さんはぶ男ではありませんでしたが、俳優になるほどの美男子とは思われず(失礼…<m(__)m>)、私は半信半疑で受け止めていました。

私の周りの人たちも同感だったようで、アルバイト仲間や職場の人たちからも、「本当に将来を考え直した方がいい」とよく言われていました。しかし、内藤さんはいつも自分自身に言い聞かせるように、「俺は役者になるんだ」と繰り返していたのが印象的でした。私のホテルでのアルバイトは年末までで終わり、その後は大学を卒業して、長野県内の農業専門学校で働いた後、安城市に戻り市議会議員となりました。

 

あのアルバイト時代から10年ほどになるある日、ひょんなことで夜中に目が覚めてしまい退屈しのぎに何気なくテレビをつけたところ、ドラマのわき役として画面の片隅に見覚えのある顔が映っていることに気がつきました。あの内藤さんでした。

その時、かつて内藤さんがよく話してくれていた、「売れない多くの役者たちはまともに食べてゆけないので、アルバイトをしたり嫁さんに食べさせてもらっている」ということばを思い出しました。自分の夢を追い続けている一途な内藤さんに感心しつつも、あんな脇役ではまともに生計が立てられないのではないかと心配してしまいました。

 

しかし、私の心配が一気に驚きに変わる日がやって来ました。それから間もなく、夜のいわゆるゴールデンタイムのバラエティー番組を見ていたところ、司会者として出てきたのは間違いなくあの内藤さんでした。私は自分の目を疑うほどびっくりしてしまいました。

その後も、ドラマ・時代劇・テレビCMなど、脇役どころか、とうとう主人公の大役もこなされるようになられました。現在はドラマ「科捜研の女」で京都府警のベテラン刑事役をこなしておられる内藤さんとは…、実は俳優の内藤剛志(たかし)さんのことなのです。今や日本の多くの皆さんが知っている名俳優のお一人かと思います。この地域でも、日曜お昼のバラエティー番組「スタイル+」の司会者をお務めです。

 

天下の名俳優と、市長の私とを、並べて語るのは内藤さんに失礼かもしれませんが、以下思うままに書き続けることをお許しいただきます。

売れっ子俳優の内藤さんや、安城市長の私などを、もしも若い皆さんが遠目にされた時、おそらくは多くは心の中で、「どうせこの人たちは自分とは違って、陽の当たるところばかりを歩いて来た人なのだろう」と想像されることでしょうが、それは大きな誤りということに気づいてもらいたくて、こんな昔話を書いているのです。

新規採用職員辞令交付式の様子

【新規採用職員辞令交付式の様子】

今を時めく名俳優・内藤剛志さんも、安城市長の私も、かつては共に白い作業服に身を包み、食べ残しで汚れた皿やグラスを洗い、レストランから出された残飯の処理をし、華やかな都会の裏方として洗い場で汗を流す、あまり格好良くないごく普通の大学生活を送っていたのです。

ただ、私たちが他の学生と違っていたと思われるのは、内藤さんは当時不可能とも思われた「役者になる」という信念を曲げることなく持ち続けられたこと。一方、私は20歳の段階では目指すべき明確な職業観を持てていませんでしたが、当時、週末に禅寺に座禅に通うというかなりの変った若者でしたので、「社会に貢献する人間にならねばならない」という強い信念は持っていました。

 

私の昔話は、以上としておきます。

ここから先は、この春巣立つことになった皆さん自身が、それでは自分はどう生きてくのかということを、個々にお考えいただきたいのです。世の中、端(はな)からスポットライトを浴びられる格好の良い生き方のできる人は、まず少ないと思われます。地味で冴えない青春時代であっても、その先にどんな目標を見出し、どんな自分になってゆくのかという自分探しこそが、とても大切なのではないかと思います。

巣立ちの季節を迎えられた皆さんが、一日も早く社会から必要とされる真の社会人へと成長されますことを心よりご期待申し上げます。

安城市長 神谷 学

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