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更新日:2013年6月20日

リーダーの条件

先日、ある講演会で市政報告のついでに、私の趣味である登山の話をさせていただく機会がありました。話の最後に出席者から質問があり、「市長は山登りに一人で出かけるようだが、単独登山は危ないのではないか」と聞かれました。私の回答は、「単独で登山した時の危険な体験はありますが、だからといってグループ登山が必ずしも安全という訳ではないのです。むしろグループであるがゆえにかえって危険なこともあるのです」でした。

具体的に挙げた例は、想定外の状況での進退判断です。一人で出かける場合は、すべてが自己責任となるため慎重になりがちで、気象の悪化が予想されれば、登山中でも自分の意志で引き返すことがあります。しかし、グループ登山の場合、ともすると大船に乗った気分になりがちで、メンバーの中から「せっかく休みをとってわざわざここまで来たのだから、行けるところまで行こう」という意見が出てくると、簡単に登山の中止はできません。

つい半月ほど前のそんな私の話が、先日の大雪山系の大量遭難という形で現実のものとなってしまったことが誠に残念でなりません。お亡くなりになった方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

まだこの遭難事件の捜査は始まったばかりの段階で、責任の所在を議論するのは時期尚早です。しかし、現地で引率したガイドらが、事前の装備確認や参加者の体調管理、さらに直前の天候判断など、危機管理に細心の注意を払っていれば、遭難者は最小限に抑えられたのではないかと悔やまれます。

八ヶ岳登山(天狗岳)

 

よきリーダーに恵まれ、みんなが穏やかに前進できれば幸いなのは、山の旅も社会生活も同様です。哲学者の梅原猛氏が著書「将たる所以」の中で、あるべきリーダー像を論じておられます。その一節に「リーダーは修羅場に強く危機を予感しなければならない」ということばがあるのを思い出しました。

リーダーは常に最悪の場面を考え、組織の人々に最悪の事態が起こった時の心構えを持たせておくべきである。最悪の結果が出た場合の対策を考えておくことで覚悟ができ、覚悟が固まることでリーダー自身が動揺することがなくなるということです。

また、リーダーにはある種の動物的な精気が必要とも述べておられます。この動物精気は、さまざまな修羅場をくぐった人たちに共通するもので、くぐり抜けた修羅場の数が動物精気の強さにつながるのではないかというお話にはうなずかされるものがあります。

 

今日、ついに衆議院が解散されました。私たちは新たに国のリーダーを選ぶチャンスを与えられたことになります。かの山岳ツアーでは、参加者がリーダーを選ぶことができないまま、最悪の結末を迎えてしまったことに悔いが残ります。私たちは、この国を導いてくれるリーダーを選べるという幸せに気づかねばなりません。

梅原氏のリーダー論の中には、「リーダーには時代の理念が乗り移らねばならない」という一節もあります。英雄が時代を作るというより、時代が、その時代の直面している課題を解決しようとする。そのために課題そのものの権化ともいうべき人間を生み出し、その人間の力により大きく歴史は前進するというものです。

暑い夏の到来ですが、炎暑の中、せめて街頭演説の間だけでも耳を澄ませましょう。仕事でお疲れでしょうが、一度くらいは演説会場に足を運んでみましょう。先行きの不透明感の強い時代にあって、時代の理念はだれに乗り移っているのでしょうか。自らの五感を研ぎ澄ませて肉声を聞き、間違いのないリーダーを選ばねばなりません。

この時代の解決すべき課題は、すでに多くの人々には見えているように思われます。課題の権化ともいうべき人間はだれなのか。選ぶ責任は、私たちにあります。

 安城市長 神谷 学

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