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更新日:2013年6月20日

帰ってきた幸せの鳥

5月に入った頃から我が家の庭先や軒先で、ツバメが羽ばたく姿をよく目にするようになりました。じっと観察していると、軒下の壁に新しい巣を作り始めていることに気がつきました。口にくわえていたのは、どうやら田植えの終わった水田から運んだ泥のようです。

垂直の壁板に、僅か一口ずつの泥を貼り付けてゆく作業は、とても気の長い仕事に見受けられ、果たして産卵までに間に合うのかとこちらが心配をさせられたものでした。
しかし、気がつけばいつの間にか巣は完成しており、雌らしきツバメが卵を抱きかかえている姿が目に付くようになりました。我が家にとっては、実に三十数年ぶりのツバメの営巣です。

私が子どもの頃、我が家の土間の天井にツバメの巣があり、ヒナが親から餌をもらう姿が目の当たりにできたものでした。いつも下から巣を見上げるばかりの私は、ツバメの巣がどのようになっているのか興味を持ち、梯子を使って間近に観察をしてみたのですが、あちらこちら触っているうちに巣を土間に落下させてしまいました。

ツバメが丹精こめて作った巣はもろくも崩れ、土間のコンクリートの上に無残な形で散らばりました。帰宅した両親から、こっぴどく叱られたのは当然のことです。この一件以来、我が家にツバメが宿ることはなくなってしまいました。

昔から「ツバメが巣をつくる家は栄える」とか、「ツバメが巣を作ると縁起がいい」などと言われて来ました。子ども心にも取り返しのつかない悪いことをしてしまったという暗い思い出が、あれ以来ずっと私の心の中にくすぶり続けていました。

あの事件から数十年の歳月が過ぎ、ツバメたちはようやく過去の出来事を水に流してくれたのでしょうか。ヒナがかえれば親鳥として、多くの虫をついばみ運んでくれることでしょう。ほのぼのとした親子の愛情交流の姿を、再び垣間見られることが今から楽しみです。

そんな訳でまたもや、ついついツバメの巣に関心が向かってしまうのですが、ツバメにすれば私は単なる外敵でしかありません。卵を抱く姿を見ようと私が近づきますと、親鳥は巣から飛び立ち、私の周りを威嚇するように羽ばたいた後、すっと飛び去ってしまいます。外敵の関心を、巣から自分に移すための親心でしょう。巣の中の出来事は今でも気になりますが、ここは辛抱して立派なヒナがかえるよう、見て見ぬふりを心掛けています。

我が家も久しぶりにツバメの運んでくれる幸福にあやかれるようになったのでしょうか。見て見ぬふり、それが野生鳥獣への愛情なのだと、自分にそう言い聞かせる毎日です。

安城市長 神谷 学

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