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更新日:2013年6月20日

ドイツ カールスルーエ市の環境施策について

愛知県市長会視察団の一員として、7月12日(月曜日)から23日(金曜日)までの12日間、欧州における環境先進都市での環境政策を中心に勉強をさせていただきましたが、今回は、フライブルグ市につづく報告第2弾です。

町の名前には、洋の東西を問わずさまざまな意味が込められています。カールスルーエというドイツの町の意味は、そもそも中世ヨーロッパを統一したカール大帝が趣味の狩りに興じる地として知られ、「カール王の安らぎの場」という意味が込められていると聞きました。

 

今でも市域に深い森林を残すこの歴史のある町で、ごみ問題を中心に環境政策について視察させていただき、その内容を以下にまとめ報告させていただくこととしました

カールスルーエの市街地郊外は、今もうっそうとした森林が残されており、市民の憩いの場となっている。欧州の町では、犬のしつけのよさに感心させられる。

1、環境先進都市としての役割について

1. 環境対策の概要(環境局長の説明から)

人口28万人、15万世帯が住むカールスルーエ市は、ライン川中流域に位置するライン地溝帯と呼ばれる谷あいの盆地状地形のため湿度が高く、また空気が滞りやすいため、ドイツ国内では同一地形のフライブルグ市と並んで、夏の暑さでは1・2位を争う町といわれている。

しかし、単に夏の暑さが問題になるのみでなく、夏の高温と市内で排出されるNOxなどによる光化学スモッグが深刻な社会問題となり、'80年代には市内の自動車をストップさせ、また工場の操業規制などの措置もとられたという。これらを契機にクリーンエネルギーの模索、ごみ焼却場の余熱利用、ライド&パークと合わせた市内の公共交通機関の建設が進められてきている。

カールスルーエ市街地の風景。市電と青々した並木から環境諸施策への取り組み姿勢がうかがえる。

公共交通機関については、市電の市内運転にとどめるのではなく、郊外からの長距離特急などとの相互乗り入れを技術開発により可能にしたことで、自動車の市内乗り入れは最盛期との比較で半減するという効果をあげている。電車は黄色い車体が市電の車両、白い車両が郊外まで向かう特急と分けられており、視覚的に分かりやすい。

こうした排気ガス対策と合わせて、緑化も積極的に進められている。緑化については、自然保護地区・景観保護地区などを決めて市内や郊外の森林を保全するだけでなく、建物の壁や屋上の緑化についても進めている。現実の効果として市街地と郊外の森林とでは、夏には7℃もの温度差が出る。それだけ緑の気温引き下げの効果は大きい。

市域の住居エリアについては1975年の時点で35.8%、2000年には40.2%となっており、理論上の限界状態となっている。このままさらに宅地化を進めれば、数年内に宅地化率は42.4%になってしまうので、今後これ以上の市街地を増やさず、工場跡地を開発するなどの形での宅地を認めるのみとされている。

2. ごみ処理業務について

廃棄物処理課長という方がパワーポイントを使って、廃棄物処理業務の種類について説明をしてくださった。廃棄物処理課の業務は、以下の6つに分類される。

  1. 収集業務
    (他に市民からの持ち込みもある)
  2. ごみ処理場の管理
  3. 市内道路の清掃
  4. 冬の除雪作業
  5. 清掃車両の管理
  6. 市民からのごみ相談

大学がある関係で学生が多く住み、独居老人世帯も多いこの町でのごみ処理の業務はなかなか大変に感じられた。

カールスルーエ市の環境問題担当からの説明を聞く私たち。

3. ごみの最終処分について

ごみの最終処分場は、市内の東西それぞれに1ヵ所ずつあるとのことであった。このうち現在主に使われているのは西側の施設のようであった。

ごみの焼却については、民間企業が焼却場を建設・運営し、市はこれに委託をするという方法であった。この町ではサーモセレクト社という民間企業が、ガス化溶融炉を用いた最新式の焼却炉を運転していたが、ごみの減量化の影響により、当初搬入量を年間22.5万t見込んでいたものの、現実には15万tの搬入しかなかったため、大気汚染防止装置が予定どおりに作動しない状態が続き、このための改修コストがかさみ経営難に陥るという想像外の事態が発生しつつあった。このごみ焼却プラントは、こうしたトラブル続きのため今年末で運転を停止するとのことで、その後のごみの搬入先をどう確保するのかが大きな問題となっていた。

また、ごみの埋立地も市の西に位置しているが、ここもドイツ政府の法律改正で従来のごみを山積させて覆土する形態のごみ投棄は、'05年をもって禁止をされるとのことであった。こうしたごみ山を実際に見ることはできなかったが、話では600万立方メートルの処理がすでに終えられ、残されている余力として20万立方メートルの能力しかないとのことである。ごみの焼却にしても廃棄にしても、カールスルーエ市は大変な状況に追い込まれていると感じられた。

なお、この問題のある焼却プラントは日本製とのことで、日本の技術や責任問題に対する若干の不信感があることを感じさせられてしまい、やや気まずい思いがした。

市の東側にあるのは、すでに利用できなくなったごみの最終処分場と、廃材焼却炉である。最終処分場から発生する発酵ガスは電気エネルギーに変えられ、近くの住宅街に供給されているという。この際に発生する汚水は浄化され、沈殿物のみ残る。こうした沈殿した残渣は堆肥に利用される。ごみからエネルギーを生み出すことが、とても重要であると考えられていた。

4. 市民の理解・協力

この他、ごみ出しについて詳細にわたり具体的な説明を受けたが、ここでは省略をさせていただくこととする。ごみの収集は有料であり、回収頻度や量によって回収料金に大きな差が出るので、基本的なごみ減量は市民自らが心得ているものと思われたが、改めて市民への啓発、協力依頼などについて質問をしてみた。回答をまとめると以下のとおりであった。

集合住宅に置かれた指定のボックスに分別しながらごみを捨てる市民のようす。

市内でも、地区によってある種の社会階層がみられるようである。マナーの悪い地区には市の職員が出向き、直接市民教育を行っている。集合住宅など責任があいまいになりやすい場所では、ルール違反で出され残ったごみに高い料金を賦課し、集合住宅の戸々に分担をしてもらい、厳しい相互の監視などに努めてもらっている。

 

ちなみに、一般的な家庭の1ヵ月のゴミ回収料金は120リットル容器換算で、資源ごみは平均84ユーロ、資源にならないものについては平均200ユーロであった(1ユーロは140円)。

事業系のごみについても、規定の容器を置くことが義務づけられている。市の引き取り料金と比較をして民間が安い場合、民間にごみ処理を委託する事業所もあるとのこと。ただし、民間に委託をする場合、どこに依頼をしてどう処理をしたかの表示が義務づけられている。

資料「家庭ごみ分別は子どもの任務」についても説明があった。家庭ごみ分別について、子どもへの教育は理想であるが、現実にはなかなか難しいようだ。この町では、学校、幼稚園などで、ごみのお兄さん、お姉さんによる教育が行われていた。

2、ビオトープに対する考えについて

1. ビオトープの概略

市役所での環境政策、ごみ問題を聞き取りした後、市の郊外にある面積約3.5haのビオトープを視察させていただいた。

もともと郊外の住宅街にある湿地帯のような場所であったが、高速道路を建設する計画が持ち上がった。そこで地域の生活・環境などを検討した結果、道路をトンネル状にし、上部をビオトープとして活用するという形になった。600メートルほどのトンネル建設に関わる総工費は、7500万ユーロ(約105億円)。これにはトンネルの強制換気、地盤工事なども含む。このうちビオトープ部分に関しては、200万ユーロ(約2.8億円)ほどの建設費が投じられている。

ビオトープ部分に関しては、薬草を中心としたお花畑が多く、生態系維持を考えて刈り取りは年2回とされ、刈り取った草は堆肥化されている。近くの川の水をポンプアップして噴水とし、人工の湿地も作られていた。湿地については、自然発生したヨシ、カヤなどが生茂り、カエルなどを中心にした両生類が生息する。

また、日当たりのよい場所に自然石を集め、石のぬくもりを活用した爬虫類の生息地も作られていた。古くからの果樹園の名残りの果樹の古木も保存され、ここに昆虫が集まり、またそれを求める鳥が飛来する。

日本流に言えば、昔ながらのヤブと見えるビオトープのようす。この丘陵状の地形の下を高速道路が通る。

日本人の感覚からすれば、単にヤブが点在する雑草の広場に見える。こうした環境対策に100億円を上回る投資をすることが、日本で理解されるのかと感じられたが、後で実際にこの下の高速道路を車で走ってみると、日本の東名高速並みのスピードと交通量があることが分かり、閑静な住宅街の真ん中に高速道路を走らせるための環境対策の必要性は実感できた。

しかし、夏の視察でもあったことから、点在するヤブのような雑木林からのヤブ蚊の発生が気になって仕方なかった。お聞きしてみると、ドイツの気候ではヤブ蚊は発生しないとのことである。ここで初めて、気候の差異というものに気付かされる。

日本で同様のビオトープを自治体が作った場合、炎暑のヤブ蚊など衛生対策、旺盛な草の生長など、ドイツ人には想像もつかない手入れが必要となることが想像された。アジアの温帯モンスーンに位置する高温多湿の日本の都市が、除草による管理コストの要らないアスファルトで塗り固められてゆく理由がよく分かる。

しかし、それをいつまでも続けていれば、真夏の都市はまともな人間生活を営めないような劣悪な環境になってゆく。折しも私たちがドイツに滞在していた7月20日、東京都内では観測史上初の42.7℃が記録されている。日本の都市のヒートアイランド現象は、尋常な状況を通り越してしまっている。

維持管理コストを低廉に抑えられる日本の気候に適した緑地のあり方、ビオトープの建設などを考える必要があると痛感させられる。

2. 市街で見かけた環境施策

ビオトープの周囲に満々と水をたたえる川があった。降雨時による周囲の住宅への浸水を心配したのだが、頑強な堤防がなくとも大丈夫とのこと。

カールスルーエ市の街路は広く、街路ごとに樹種が定められ、美しい並木道が続く。カシ、プラタナス、モミジ、マロニエ、ボダイジュなどのようであった。

私は以前から、こうした街路の樹種については、地元住民との話し合いで決定し、樹種の希望をかなえることで、後の雑草や樹木の管理を地元住民に依頼するという方法こそ理想なのではと考えていた。その点について担当者にお聞きしてみたところ、素人はどんな木がどんな場所に合うかが分からず、後の手入れの大変さをほとんど理解できないので、街路の樹種の決定に市民参加は認められておらず、市の公園課の専門官が決めているとのことであった。

視察したビオトープ脇に、自然工法による護岸の川が流れていた。雨も降っていないのに水量は多く、豪雨時の浸水被害を心配したが、上流部に遊水地が設けられていることと、また市内では住宅建設時に雨水の地下浸透を義務付けているとの話であった。

実際、いくつかの戸建住宅、集合住宅を見て回ったが、バーク(樹皮)を敷き詰めた庭を持つ家、小さな石を組み合わせたミニ・ビオトープ状の池を持つ家、芝生の張られた裏庭など、市の建築指導の徹底ぶりと市民の環境に対する意識の高さがうかがえた。

この町では、駐車場や空きスペースをアスファルトで塗り固められた通常の日本のアパート・マンションなど、だれも見向きもしないであろう。不動産としての価値を高め、よい買い手を捜すために、より環境に配慮した住宅提供を考えねばならないという、そうした気運を感じた。

新たに分譲したばかりの新興住宅地。将来の樹木の生長も考えてか。緑地の配慮とともに、広い共同空間がとられている。

将来を見据えた行政指導と市民の意識レベルの高さが、町全体にある種の風格をもたらすのではないかと思われた。

安城市長 神谷 学

 

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